なぜ「デザイン思考」なのか?:これまでの背景

 デザイン思考が求められるようになった背景には、人類が過去250年の間に経験した2つの社会的イノベーションと関係があります。
 1つ目のイノベーションは18世紀後半に起こりました。ワットが新方式の蒸気機関を発明して本格的に始まった産業革命です。ワットは、以前から存在していた「蒸気で機械を動かす」というアイデアを実用段階まで発展させることでイノベーションを起こしました。これにより、何十日もかけて出来上がっていた一つの製品をたった1日でつくる程の効率性が実現されたのです。
 次のイノベーションは19世紀後半に起こりました。フレデリック・テイラーの科学的管理法によって始まった生産性革命です。当時の一流の労働者は職人芸的な働き方をしており「一流の労働者とそれ以外の労働者との違い」は周囲にも本人にもわからない状態でした。しかし、テイラーはトップクラスの労働者の働き方をつぶさに観察することで「どのような手順でどの程度作業を行えば労働生産性が高くなるか」を明らかにしました。テイラーの提示した方法を実践することで、一般の労働者でも一流の労働者並に働けるようになったのです。