よくある質問 [Q & A]
[Q7] 実際にデザイン思考というツールを通して生み出されたサービスが、現実的に市場で通用しますか?
[A7] 万能な経営ツールは存在しないように「デザイン思考を使えばそれだけで売上が立つ」ということはありません。例えば、組織のミッションやビジョンの明確化と浸透、組織戦略や事業戦略の考案、戦略を実行する上で必要となる人材の確保、人材が高いパフォーマンスを発揮できる組織体制の構築や評価制度の構築など、イノベーションを実現するためには様々な取り組みが必要となります。
デザイン思考にできることは大きく分けて3つです; 1)人間中心のマインドセットが身につく、2) 1)を踏まえたイノベーション活動のプロセスを共通言語化できる、3) 2)の中で、具体的な成果を出すためのツールを把握することができる。そして、これらの要素を元にして生まれた新しいアイデアやコンセプトを、どうやって市場に浸透させていくか・どうやって利益を確保していくかはビジネスモデルの考案やマーケティング戦略の考案などが必要になってきます。
あくまで、イノベーション活動を推進する一つの方法論としてデザイン思考を活用することが重要です。
[Q6] デザイン思考はどれぐらいの期間で一周させるのが適切ですか?どのように目安をつければよいですか?
[A6] 1周の目安期間は特に決まりはありません。デザイン思考のプロセスは1周回すのではなく、何周も行ったり来たりしながらユーザー理解を深めていくことが本質です。そのため、1巡することが目的にならないように気を付けてください。
一概には言えませんが、私たちがプロジェクトを行う際は、大体3ヶ月間で一巡します。最初の共感フェーズで大体1.5ヶ月程度費やします。共感フェーズはその後のフェーズの土台となりますので「もう新しい発見がない」という論理的飽和を迎えることを目安に行うといいでしょう
[Q5] ユーザーのニーズをうまく掘り下げるにはどうしたらよいですか?また、どうしたら上手くなりますか?
[A5] ニーズやインサイトをうまく抽出するためにご紹介しているのが、ユーザーへの共感を高める3つの方法論:①観察、②インタビュー、③体験です。今回は②インタビューについてお伝えします。
インタビューのゴールは、相手の視点を取得することです。つまりユーザーが目の前にいなくても、テーマに関するユーザーの言動や感情について詳細に説明出来る状態です。ゴール達成のための注意点が2つあります。
1つ目に、インタビューではユーザーと自分を同一視(ユーザーも自分と同様に考えるだろう)しないこと。2つ目に、自分が持つ仮説を証明するためではなく、仮説を探索しに行くことです。純粋に相手に興味を持ち、「なぜ?」と掘り下げ、相手の視点が取得出来るよう心がけましょう。
その他、ユーザーの声の大きさ・トーン等に気を配る、沈黙を受け入れる…等、テクニック的には様々なポイントがありますが、まずはユーザーと自分を同一視しない/仮説検証ではなく仮説探索をする、の2点を気に留めながら、日常会話や仕事上での会話等、あらゆる場面で練習してみて下さい。
また少し視点がずれますが、ユーザーへの共感を他社へ任せ、任せた結果の二次データを見ながらイノベーション・プロジェクトを進めようとする方がいらっしゃいます。様々なアプローチがあるかと思いますが、プロジェクト・メンバー自身が調査していない情報を元に、自社の次の事業の柱となる可能性のあるプロジェクトを実現することは難しい、と我々は考えています。スキルが低かったとしても、まずは自分たちで一次情報を掴み、前に進めてみる姿勢を大事にして下さい。
[Q4] プロダクトでデザイン思考を活用することはイメージできるのですが、サービスには適用できますか?
[A4] デザイン思考はサービスにも活用できます。
デザイン思考は人間中心に問題を発見し解決する手法です。そのため、課題の対象がプロダクトであろうがサービスであろうが、「人間(ユーザー)だったらどこに困るのか?」「どのように現状使われているのだろうか?」と言う視点で望んでください。
[Q3] 社内でデザイン思考を推進・活用することへの理解が得られないのですが、どのような対処法がありますか?
[A3] デザイン思考を活用することへの理解が得られない理由は何でしょうか。まずは理由を特定されることをお勧めします。今回は同様のご相談例を3つ程ご紹介します。
1. 新しい考え方を受け入れるのに抵抗がある
新しい考えにすぐ飛びつく人、市場での需要が確認出来ないと不安な人、圧倒的に需要があっても受け入れない人…世の中には様々なタイプの人間がいます(参考:キャズム理論)。あなたの周りにいるのはどのタイプの人間ですか。タイプを見極め、巻き込む人・順番を戦略的に考える必要があります。新しいことへ抵抗感のある方へは、「デザイン思考」という言葉を一切使わない手も一つかもしれません。
2. 目的はイノベーション推進だが…失敗は許されない
デザイン思考の主な活用先はイノベーション活動の推進です。イノベーション活動は失敗が前提となり、イノベーション活動の成功率も非常に低いです。この確率を見ると「うちはイノベーション活動が出来ない」と断言される方もいらっしゃいます。失敗が許されない環境で働く方々です。そのような環境下で、失敗を前提としたデザイン思考の活用は、受け入れ難いでしょう。評価基準・システム、マインドセット醸成等にテコ入れする必要があります。
3. 兼業業務がある
イノベーション活動を本業としない人にとっては、デザイン思考を活用した活動は、彼らの本業業務の時間を奪う活動です。彼らには、評価に繋がるもっと大事な自分の業務があります。たとえ部署全体でイノベーション活動推進が目標に謳われていたとしても、彼らの興味・関心は自分の評価に直接的に繋がることへ向かい易くなります。先程の話とも関連しますが、このケースは評価基準を変更するか、兼業ではなく専業でイノベーション活動が評価される体制にすることが糸口となります。
[Q2] デザイン思考は人間中心的な視点を持つことが大切だということですが、BtoBの場合は適用できますか?
[A2] BtoBであっても製品やサービスの購買や利用に関わるのは「人間」です。デザイン思考は「人間中心」の考えが土台にあるため、BtoBでもデザイン思考は適用可能です。ただし、注意点があります。
■ BtoCの場合よりも利害関係者が増えることが多いため、主要関係者のニーズをすべて把握する必要がある。結果的に、デザイン・プロセスが複雑になる可能性が高い
フードビジネスを例にとりましょう。Aさんが食事のためにレストランに来ました。Aさんは
1)自分の希望でそのレストランに足を運び、
2)店員から渡されたメニューから食事を選び、
3)自分が選んだものを自分で食べ、
4)最後に支払いをする、
ということになります。
お店を選んでから支払うまでの間に様々な行動があるわけですが、すべてAさんが1人で行っています。これはBtoCの典型例です。
一方、BtoBの場合はAさんが1人でこなしていた役割を多くの人で分担することになります。例えば、上記のレストランを運営している会社が、Aさんの勤務先の社員食堂も運営しているとします。
背景には、
1)無料の社員食堂を用意した方がいいと「人事部のマネージャーBさん」が考え、
2)その提案を「マネージャーBさんの上司Cさん」が承認し、
3)社員の健康を一番に考えてくれる運営会社を「人事部の担当者Dさん」が選んだ
・・・ということがあったかもしれません。
Aさんが最終的に「食べる」ことは同じですが、そこに至るまでのプロセスにおいて様々な関係者が存在していることがわかります。
- 食事に限らず社内の福利厚生を充実させたいと考えているマネージャーのBさん
- 限られた予算をどのように活用するかいつも考えているBさんの上司Cさん
- 健康へのこだわりが強く、食事に気を使いたいDさん
Aさんを含めたすべての関係者にとってよい製品やサービスを提供することがBtoBでは重要となります。
関係者が1人しかいないBtoCよりもプロセスが複雑になる可能性は高いのですが、関係者の誰もが喜怒哀楽のある「人間」であることにかわりはありません。
つまり、人間中心の考えを土台としたデザイン思考のアプローチはBtoBでも適用できる余地があるのです。
[Q1] デザイン思考とは簡潔に言うとどのようなツールでしょうか。
[A1] デザイン思考は「イノベーションを起こすための方法論」です。つまり、イノベーション活動を進める際の 考え方/プロセス/ツールを体系的にまとめたものです。デザイン思考は様々な特徴を持ちますが、中でも次の2つの特徴がよく取り上げられます。
1: 人間中心的な視点
会社視点ではなく、プロジェクトが貢献する対象ユーザーを中心に考えます。全ての過程において、彼らを主語にしてプロジェクトを進めます。
2: 素早い失敗から学ぶ
イノベーション活動は不確実なことばかりです。不確実なことを出来るだけ早く排除するため、行動しながら学びます。初めは失敗も多いですが、お金をかけずに早めに試して確実性を上げていきます。